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東京地方裁判所八王子支部 昭和51年(ワ)495号

原告

東紹太郎

(ほか三二名)

右三三名訴訟代理人弁護士

田中和

西山鈴子

被告

日本労働組合総評議会全国金属労働組合東京地方本部東邦製作所支部

右代表者支部長

井次吉

右訴訟代理人弁護士

宮里邦雄

山花貞夫

右訴訟復代理人弁護士

小澤克介

主文

1  被告は原告らに対し、別紙目録(略)元金欄記載の各金員及びこれらに対する同目録遅延損害金起算日欄記載の日から支払ずみまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

2  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

4  この判決は原告勝訴部分に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告ら

1  被告は原告らに対し、別紙目録元金欄記載の各金員とこれらに対する同目録遅延損害金起算日欄記載の日から昭和五〇年一一月一四日まで年五・六パーセント、同年同月一五日から支払ずみまで年六・八五パーセントの複利計算(元本組入日毎年一〇月五日)による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決並びに仮執行宣言。

二  被告

1  原告らの請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

との判決。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告らは、かつて被告の組合員であったが、いずれも別紙目録備考欄記載の日に被告を脱退した。

2  原告らは、被告に在籍中、被告の組合規約(以下「支部規約」という。)第七〇条に基づき、争議の際等に備える資金として毎月三〇〇円以上の金員を被告に積み立て、(以下「闘争積立金」という。)前記脱退当時の原告らの各積立金元本額は、別紙目録元金欄記載のとおりである。

3  前記積立金は、組合員の個人的財産であるから、組合員が資格を喪失したときには返還されるべきものである。すなわち、前記支部規約第七〇条によれば積立金の額は「三〇〇円以上」とされ、被告組合員は、この範囲内で被告の勧奨する可及的多額の金員として、人によっては金三〇〇円、五〇〇円或は金一、〇〇〇円というように各自任意の金額を積み立てて来たのであって、原告らの各積立月額も別表(略)記載のとおり各人の任意の金額を積み立てたのであるから、これら積立金は各個人の財産に属するものといわなければならない。しかも、被告は、昭和四二年一〇月二〇日、原告湯浅長歳、青木浩から未納カンパを徴収するにあたり、同人らの闘争積立金と相殺する方法により徴収した旨主張して同趣旨の領収証を同人らに交付したほか、訴外岩下一敏に対し闘争積立金を任意に返還した事実がある故、これらは右積立金が組合員個人に帰属していることを被告が自認していたものというほかなく、原告らに対しても前記積立金を返還することが組合員平等の原則に合致するものというべきである。

4  なお、前記闘争積立金は、被告が一括して被告名義で東京労働金庫三鷹支店に預金し、同金庫は、これに所定の利息(その利率は逐次変化しているが、原告らの脱退日のうち最も早期の昭和四二年五月から昭和五〇年一一月一四日までの間の最低利率は年五・六パーセント、同年同月一五日以降は年六・八五パーセントである。)を付し、かつ、毎年一〇月五日に前年一〇月四日から一年分の利息を元本に組入れていた。

5  よって、原告らは被告に対し、別紙目録記載の各積立金元金とこれらに対する被告を脱退した日の翌日である同目録記載遅延損害金起算日から昭和五〇年一一月一四日までは年五・六パーセント、同月一五日から支払ずみまでは年六・八五パーセントの複利計算(元本組入日毎年一〇月五日)による約定利息相当の遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の項の事実は認める。

2  同2の項の事実は認める。

3  同3の項のうち、支部規約第七〇条が積立金の徴収額を金三〇〇円以上と規定し、組合員間で具体的な積立金額に差異があることは認めるが、その余は争う。

闘争積立金を積み立てることは組合員の支部規約上の義務であり、その目的は組合の団結を維持強化し、闘争時における資金を確保することにある。なるほど闘争積立金はその積立額が各人により異なり、又支部員の個人名義で普通預金とし一括して支部名義で労働金庫の定期預金に積み立てられる(支部資金取扱規定第一〇条本文)が、その引き出しは組合員の自由にできることではなく、組合大会において過半数で決定されなければならない(支部規約第一六条八号、支部資金取扱規定第一一条、支部規約第一七条本文)のであって、これらの点からすると、積立金が組合員の個人財産であるということはできない。

4  同4の項のうち、東京労働金庫の闘争積立金に対する昭和四二年五月から昭和五〇年一一月一四日までの間の利息の最低利率が年五・六パーセントであることは否認し、その余の事実は認める。

右期間のうち昭和四七年七月一七日から昭和四八年四月二二日までの利率は年五・三五パーセントであり、その余の期間のそれは年五・六パーセント以上である。

三  抗弁

1  仮に、闘争積立金が組合員の個人財産の性格をもつものであるとしても、これを組合員資格の喪失時に返還するかどうかは団結自治の範囲内において自由に定め得ることであり、被告の支部規約上任意の脱退の場合にはこれを組合員に返還する旨の規定はなく、原告らの闘争積立金は被告に帰属した。すなわち、

(一) 支部規約第七〇条(積立金)は「本支部は争議の資金及支部の目的達成のため三百円以上の積立金を徴収する。但し第九条、一、三、四項に該当の場合は返還する。」と定め、第九条(資格の喪失)は「支部員は左の場合資格を喪失する。一、退職、二、除名、三、死亡、四、脱退(職制その他の変更により第三条の除外の項に該当する場合)」と規定している。更に、第三条(組織)は「本支部は株式会社東邦製作所と雇傭関係を結んでいる労働者をもって組織する、但し左の者を除く。一、会社役員、二、部長、三、部長代理、四、課長、五、給与人事の担当責任者、六、嘱託及び顧問(但し労働協約第四十九条の臨時嘱託を除く)、七、試傭期間中の者、八、其の他大会で認めた者」と定めている。

(二) ところで、支部規約第九条第四項が資格喪失事由としての脱退を単に「脱退」とするのでなく、「職制その他の変更により第三条の除外の項に該当する場合」との括弧書を付しているのは、被告が訴外株式会社東邦製作所(以下「会社」という。)との間に従来締結してきたユニオン・ショップ協定との関連に基づくのである。被告は会社との間に、昭和三〇年六月二九日ユニオン・ショップ協定を締結し、右協定は昭和三八年一〇月一日施行の労働協約においても取り込まれ、原告らの脱退時にも存続していた。右協定のもとでは、任意の脱退者は会社の従業員としての地位を当然に喪失することになるのであるから、任意の脱退を殊更に資格喪失事由として支部規約上定める必要はなく、被告として容認しうる脱退すなわち支部規約に定める組合員資格除外事由に該当することによる組合からの離脱についてのみ定めればよいとの立場から前記規定を設けたのである。前記支部規約九条四項の「脱退」には任意の脱退は含まれない。

2  仮に、以上の主張が容れられないとしても、次のとおり、被告は原告らに対し、それぞれ除名処分をしたから支部規約七〇条但書、九条により闘争積立金を返還する必要はない。

(一) 昭和四二年の春闘で、被告は会社に対し七、〇〇〇円の賃上げを要求したが、会社は三、〇〇〇円の回答とともに職務職能給という新賃金体系を提案してきた。そこで、被告は、職務職能給反対の方針をかかげて残業拒否、出張拒否、ストライキ等の闘争を展開し、春闘はかつてなく長期化するに至ったが、この闘争のなかで、会社は営業部門などの一部組合員に働きかけ反組合的な分派活動グループを養成し、これらグループを通じて組合執行部への批判を展開させた。そして、右分派グループは、春闘の重要な労使攻防の山場となった同年五月一一日、二五名の連署で突如脱退届を被告に提出し、同日組合結成大会を開いて第二組合である東邦製作所従業員労働組合を結成したうえ、その後も被告の組合員殊に婦人、年輩者らに対し、勤務時間中或は家庭訪問により被告からの脱退を勧奨し、あらかじめタイプした脱退届に署名捺印を求めるなど会社と一体となって被告組合の分裂を企図した。その結果、同年七月半ばころまでに原告らを含む四五名が被告を脱退するに至ったのである。

(二) そこで、被告はこれらの脱退者が会社と一体となって反組合的な分裂活動を行った者として、同年五月一二日開催の臨時大会で、同人らの脱退を認めない旨を決議し、同年六月五日の臨時大会において、前記二五名のうち原告城石(新組合組合長)、同東井(新組合結成大会議長、新組合執行委員)、同細谷(新組合副組合長)、同香月の四名を除名処分に、その余の者を権利停止処分に付し、更に、同年九月二三日の定期大会において、右四名の原告を除くその余の原告ら全員に対し除名処分をした。

(三) 被告の原告らに対する除名処分は原告らの被告に対する脱退の意思表示後にしたものであるが、除名処分は除名事由が存在する限り脱退の意思表示後であっても可能である。支部規約第八条(脱退の手続)は、「本支部を脱退しようとするものは、あらかじめその理由を明記し、支部長に届出て、大会の承認を得なければならない」と定めており、被告は、右規約に基づき原告らの脱退を承認しない旨大会で決議したうえで除名処分を行なったのである。ところで、右規約第八条について、これを脱退の意思表示があっても脱退の効力を大会の承認があるまで認めない趣旨であると解するならば、脱退の自由を不当に制限するとの批判も妥当するであろうが、右規約の趣旨は、脱退の意思表示があっても被告がその者について除名等の統制権発動のための審査と、所定の手続を行なうための機会を確保する趣旨を含むものとすれば決して不合理ではなく、また不当に脱退の自由を制限するものともいえない。脱退の効力が意思表示のみによって生ずるとしても、それは脱退の意思表示があった以上、組合員としての地位と義務を以後新たに強制しえないにとどまり、それ以外の一切の不利益を課することも許されなくなるわけではないと解すべきであるから、被告としては、原告らに対し脱退の意思表示後であっても除名事由の存否を判断し、除名処分に付することによって任意の脱退と異なった取扱いを行ない、右除名処分を理由に積立金の返還請求権を有しないとすることは、団結自治の範囲内に属するものとして許されるというべきである。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1について

(一) 本文は争う。(一)の事実は認める。

(二) (二)の事実のうち、被告主張のユニオン・ショップ協定がかつて存在していたことは認めるが、その余は争う。

支部規約第七〇条但書が引用する第九条第四項の「脱退」には、被告主張の括弧書が付されているが、同項には何ら脱退を右括弧書の場合に限定する趣旨の文言はないのみならず、支部規約第八条は「本支部を脱退しようとするものは、あらかじめその理由を明記し、支部長に届け出て、大会の承認を得なければならない」として当然に任意の脱退を予想した規定を置いていることからしても、第九条第四項の脱退には任意の脱退を含むと解すべきであって、同項の括弧書は注意的規定に過ぎない。また、被告と会社間のユニオン・ショップ協定は、会社の解雇義務に関する規定を欠く単なる宣言的なものにすぎず、組合員が任意に脱退したのちも会社の従業員として留まる余地を残しているのみならず、右協定があっても組合員が大量に組合を脱退したうえ新組合を結成した場合には、その組合員に協定の効力が及ばないと解されていることなどからすると、任意の脱退が会社従業員としての地位を当然に喪失させるわけでもないから、被告の主張は理由がない。仮に被告主張のように解すると、支部規約上任意の脱退を資格喪失の事由として認めないことに帰着するところ、任意の脱退を認めないことは組合員の思想・信条・組合選択の自由を完全に抑圧する結果となり、極めて不合理なことは明らかである。

2  抗弁2について

(一) 本文のうち、除名が支部規約上闘争積立金の返還事由にあたらないことは認めるが、その余の事実は争う。(一)の事実中、被告が昭和四二年の春闘で七、〇〇〇円の賃上げを要求し、会社がこれに対し三、〇〇〇円の回答とともに職務職能給を提案したため、被告主張の闘争が展開され春闘がかつてなく長期化したこと、原告らのうち二五名が同年五月一一日に被告に脱退届を提出し、同日午後組合結成大会を開いて東邦製作所従業員労働組合を結成したこと及び同年七月半ばまでに原告らを含む合計四五名が被告を脱退したことは認めるが、その余の事実は否認する。

(二) (二)の事実のうち、被告主張の原告城石ら四名が除名通知を、その余の二一名が権利停止の通知を受けたことは認めるが、その余の事実は知らない。

(三) (三)のうち、支部規約第八条の規定が被告主張のとおりであることは認めるが、その余の主張は争う。

脱退について大会の承認を要する旨規定する支部規約第八条は脱退の自由を不当に制限するものであって無効であり、原告らの脱退はその意思表示が被告に到達した時確定的に効果を発生しているのであるから、その後に被告が原告らを除名処分に付したとしても、原告らに対し何らの効果もない。

第三証拠(略)

理由

一  原告らは、かつて被告の組合員であったが、いずれも別紙目録備考欄記載の日に被告を脱退したこと及び原告らが被告に在籍中、支部規約に基づき闘争積立金として毎月三〇〇円以上を被告に積み立て、前記脱退日現在前掲目録の元金欄記載の各積立金を有していたことは、当事者間に争いがない。

二  支部規約第七〇条が「本支部は争議の資金及び支部の目的達成のため三百円以上の積立金を徴収する。但し第九条一、三、四項に該当の場合は返還する」と定めていること及び右第九条一、三、四項が被告組合員の資格喪失事由のうち退職、死亡、脱退(これに任意の脱退が含まれるかどうかは後に検討する)を指すものであることは、当事者間に争いがなく、(証拠略)によれば、闘争積立金の積立月額は支部規約上「三百円以上」とされていたが、被告の執行部は組合員にできるだけ多額を積み立てるように勧奨し、昭和四二年当時で組合員の積立月額は金三〇〇円から金二、〇〇〇円に至るまで各個人によって異なり、原告らのそれも別表記載のとおりで、これらの金額は組合員が任意に決めたものであること、右積立金は支部資金取扱規定により「支部員の個人名義で普通預金とし、一括して支部名義で労働金庫の定期預金へ積立てるものとする」と定められ(第一〇条)、又その引出しにつき「争議の時大会の承認を得て引出し、支部員各自積立金額まで無利息で貸し出すことができる」と定められ(第一一条)ているが、実際の運用は、被告が組合員の賃金から天引した積立金を一括して被告名義で東京労働金庫三鷹支店に定期預金し、同金庫はこれを組合員の個人別積立金額を明らかにした台帳に記載したうえ、毎年一回その明細を被告を通じて組合員個人に知らせていたこと、これまで闘争積立金が使用された例としては、昭和四二年の春闘及び昭和四四年夏期、昭和四五年末の各一時金闘争で右積立金を担保として被告が東京労働金庫から金員を借入れて組合員に貸し出し、同金庫に対する返済には、昭和四二年春闘の際は右積立金を一部取り崩し、その余の場合は組合員の一時金から徴収した金員をあてたこと、被告は、原告湯浅長歳、青木浩に対し、同人らの脱退後である昭和四二年一〇月二〇日、被告へのカンパ金として原告湯浅につき金一八、一〇〇円、同青木につき金一六、一五〇円を同人らの各闘争積立金から徴収したとして、その旨の領収書を同人らに交付していること、以上の事実を認めることができ、これを覆えすに足りる証拠はない。

右に認定したところによれば、闘争積立金は、組合員がこれを積み立てる義務を負うこと及びその引き出しが争議時に大会の承認を得てされるものである点で組合による制約があるものの、積立月額は支部規約の定める最低額以上で組合員個人が任意に決めた額であって、個人別の積立金総額は常に各組合員に明らかにされ、支部資金取扱規定も積立金を「個人名義の普通預金」としていること、被告は、原告らの一部に対し、積立金の返還義務があることを前提としたと考えられる前認定の措置をしていることからすれば、前記積立金は、一般の組合費や資金カンパとは全くその性質を異にし、組合員がその資格を有する限り支部規約及びこれに基づく支部資金取扱規定に準拠して被告にその管理、運用を委託した、組合員の個人的な積立預託金としての性質をもつものと解されるから、組合員がその資格を喪失したときは、これを返還しないとする支部規約上の明文の規定がありかつその根拠に相当の合理性がある等の特段の理由がない限り、組合員に返還されるべきものと解するのが相当である。

三  そこで、抗弁1につき検討する。

支部規約第七〇条但書が闘争積立金を返還すべき場合として、同規約第九条第一、三、四項に該当する場合を掲げ、同九条が「支部員は左の場合資格を喪失する。一、退職、二、除名、三、死亡、四、脱退(職制その他の変更により第三条の除外の項に該当する場合)」と定め、同条四項の括弧書のうち「第三条の除外の項に該当する場合」とは訴外会社の従業員のうち会社役員等一定の身分を有するため組合員資格から除外される場合を指すものであることは、いずれも当事者間に争いがない。

被告は、規約第九条第四項にいう脱退は、被告と会社との間で締結されたユニオン・ショップ協定との関係から、同項の括弧書に限定されたものであると主張する。

なるほど、(証拠略)によれば、被告は会社と、昭和三〇年六月二九日締結の労働協約で「会社の従業員は総て組合員とし組合員は総て会社の従業員とする(ただし、会社役員……等一定の者を除く)」(第三条)とのいわゆるユニオン・ショップ協定を締結し、昭和三八年一〇月一日付労働協約では「会社の従業員は次の各項に定める者を除き総て組合員でなければならない。従って次の各項に該当しない者は原則として解雇する。但し解雇する場合は会社と組合で協議を行う。1会社役員、2部長、3課長、4人事経理に関し最終決定に参画する者、5臨時に雇入れた者及び試傭期間中の者、6顧問及び嘱託(第四七条の臨時嘱託を除く)、7その他双方協議の上定めた者」と定め、この協定が原告らの脱退当時まで存続していたことが認められる。

しかしながら、右のようなユニオン・ショップ協定が存在しても、組合員が任意に被告組合を脱退することは勿論あり得る事態であり、組合を脱退した者については、会社は被告組合に対し、原則としてこれを解雇すべき債務を負うが会社がこの債務を必ず履行するとは限らないから、被告の主張するように任意の脱退をした者は前記ユニオン・ショップ協定上当然に会社の従業員たる地位を失うということはできず、被告を任意に脱退した者が解雇されずに会社の従業員としてとどまる余地があり、任意の脱退を組合員資格喪失事由として定めることの実際上の必要性があったものといわなければならない。そして、(証拠略)によれば、右ユニオン・ショップ協定締結前の支部規約には締結後の現行支部規約第九条第四項の括弧書に相応する規定はなく、前者にはそもそも組合員の資格喪失事由を包括的に列挙した規定を欠いていることが認められるのであるから、右括弧書に相応する規定が新らたに設けられたからといって、そのことから直ちに右括弧書がユニオン・ショップ協定の締結に対応して被告主張の趣旨で設けられたものということもできない。かえって、支部規約第八条が「本支部を脱退しようとするものはあらかじめその理由を明記し、支部長に届け出て、大会の承認を得なければならない」と定めていることは当事者間に争いがないところ、ここにいう脱退には文理上何らの制約はなく、大会の承認を脱退の有効要件として脱退に厳格な制限を加えていると見られること(ただし、このような制限は組合員の脱退の自由を不当に制限するものであって、無効と解すべきである。)及び前記規約第九条四項の脱退が被告主張のようにその括弧書の場合に限定されるならば組合員となり得ない(規約第三条)括弧書にあたる者の脱退についてあらためて規約八条の規定を必要としないのに殊更この八条の規定を設けていることからすると、この八条の規定は、任意の脱退を当然に予定した規定であるというほかはなく、支部規約がこのように任意の脱退を予定してその手続要件を定めているのであれば、組合員の資格喪失事由中にも当然任意の脱退を含むものと解するのが相当であり、これを除外すべき合理的な理由を窺わせる資料はない。

以上のところからすると、被告の支部規約が任意の脱退を積立金返還事由から除外する旨の明文を置いているとは到底いゝ得ないし、種々の理由によってされる任意の脱退を一率(ママ)に積立金返還事由から除外することに相当の合理性があるともいゝ難い。ほかに、この認定、判断を左右する資料は存しない。

被告の抗弁1は採用できない。

四  次に、抗弁2について検討する。

まず、支部規約上組合員の「除名」が闘争積立金の返還事由にあたらないこと、昭和四二年の春闘において、被告は、賃上げ要求及び訴外会社から提案された職務職能給の問題をめぐり、残業拒否、出張拒否、ストライキ等の闘争を展開したが、原告らの一部を含む二五名は、右闘争中の同年五月一一日に被告を脱退し、新たに東邦製作所従業員労働組合を結成したこと、その後同年七月半ばまでに原告らを含む合計四五名が被告を脱退したことは当事者間に争いがなく、(証拠略)によれば、被告は、同年五月一二日の大会で同月一一日に脱退届を提出した二五名につき脱退として認めない旨の決議をしたうえ、同年六月五日の大会で原告城石、同細谷、同東井、同香月の四名に対し、反組合的な分裂策動をしたことなどを理由に除名する旨を決議し、ついで同年九月二三日の大会で、右四名を除くその余の原告全員に対し同様の理由で除名する旨を決議したことが認められ、右認定に反する証拠はない。そして、原告らの前掲任意の脱退後に被告が原告城石、東井、細谷、香月の四名に対し除名の通知をしたことは当事者間に争いがないが、右四名を除くその余の原告らに対し除名の通知をしたことはこれを認める証拠はない。

そこで、除名の効力の有無について検討するに、(証拠略)によれば、被告は、昭和三七年ころから毎年の春闘においてストライキを含む闘争を繰り返し、しかもスト期間は年を追うごとに飛躍的に増大してきたが、昭和四二年の春闘は被告の賃上げ要求及び会社から提案された職務職能賃金体系をめぐり残業・出張の拒否、ストライキを含む闘争はかつてなく長期化する様相を呈し、このような状勢のなかで、原告城石等は被告の組合大会において被告執行部の会社に対する対応に批判的な意見を述べたが、参加者の野次等により発言も満足にできなかった。原告城石等は、それまでの被告の闘争が、上部団体の指令に盲従し、闘争至上主義と感じていたが、右のように組合員の少数意見を満足に発表することもできない大会運営をしている被告には追随できないとの考えから、原告城石を中心とする二五名は、昭和四二年五月一一日前記のように被告に対し脱退届を提出し、新らたに東邦製作所従業員組合を結成したうえ被告の組合員に呼びかけて新組合への参加を勧誘した結果、同年七月までに新らたに合計二〇名が被告を脱退して新組合に加入するに至ったこと、右新組合の結成大会は会社の勤務時間中に行なわれたが、参加者はのちに職場を離脱した時間分の賃金カットを受けたこと、その後右新組合は、昭和五一年に全金同盟に加入し現在まで活動を継続していること、以上の事実を認めることができ、右認定を覆えすに足りる証拠はない。もっとも(証拠略)によると、被告は、原告城石ら二五名が新組合を結成した昭和四二年五月一一日、この二五名が会社を無届けで欠勤したこと、その前日に原告赤塚らが会社の備品を使用して脱退届のコピーをしたこと及び同日の被告の臨時大会に際して、被告が要請していないのに営業部の鈴木業務課長が退社時間を三〇分繰り上げて課員を右大会に出席させ、その者の大多数が脱退届を提出した者であったことの三点の事実を掲げて、脱退届提出による分派活動が事前に会社との合意の上でされた疑いがあるとし、会社に対し処置を要求する申入書を提出していることが認められるが、新組合結成の際の欠勤(職場離脱)者はあとで会社から賃金カットを受けたのは前認定のとおりであり、原告城石本人尋問の結果によれば、会社備品のコピヤ(ママ)ーは被告組合でも当時使用していたことが認められ、又(人証略)によれば、被告の大会は従来会社の工場で行なわれていたが、就業時間が工場は午後四時までであるのに対し営業所は午後五時までと一時間差があったため、重要な場合には、被告が会社に対し営業所勤務の者が午後五時までに参加できるよう申し入れていたこと及び被告が前記五月一〇日の臨時大会について、営業所の組合員にもその開催予定を通知したことが認められるのであって、仮に前記業務課長が課員を三〇分早く大会に参加させるため退社時間を繰上げたとしても従来の被告組合の意向を汲んだ措置と考えられるのであって、これらの点を考慮すれば、前記申入書記載のような事実があったとしても、それをもって原告らの脱退が会社との合意の上でされたものと断ずることはできない。ほかに、被告主張の原告らの脱退が会社と一体となった組合分裂策動であることを認め得る証拠はない。

叙上の事実関係からすると、原告らの脱退は、それまでの被告の活動方針、組合運営の実態等に追随できないことから自らの納得のゆく団結を求めてされたものというべきであり、憲法第二八条によって保障された団結権の行使として正当性を有するものであるから、原告らの被告組合からの脱退、新組合の結成、これへの参加の呼びかけ等の一連の行動が、前記のように被告の争議中にされたものであったとしても、これをもって分派活動とし、被告の統制権の範囲に属するものということは許されないし、原告らの脱退が被告の統制権の行使を回避する目的でされた権利濫用行為と目することもできないから、結局被告の前記除名は効力を有しないものというほかはない。

被告の抗弁2も採用の限りでない。

五  以上説明のとおりであるから、被告は原告らに対し、別紙目録元金欄掲記の各金額とこれに対する積立金の支払期である原告らの各脱退日の翌日以降の遅延損害金を支払う義務があるところ、前記(証拠略)中の支部資金取扱規定第一〇条及び(人証略)によれば、闘争積立金は、名目上個人名義の普通預金とされ、被告がこれを一括して東京労働金庫の定期預金とするが、同金庫における普通預金と定期預金の各利息の差額はこれを支部資金に繰り入れることが規約上明定され、実際にもそのように運用されていたことが認められ、この事実からすると、被告の組合員に帰属させるべき約定利息は、東京労働金庫の普通預金の利率と同率と解される。しかし、(証拠略)によれば、昭和四二年から昭和五〇年までの同金庫の普通預金の利率は最高でも年三・二五パーセントであることが明らかであり、他に原告ら主張の約定利率を認め得る証拠はない。そして、右認定の約定利率による利息は、これを一年毎の複利計算をしても、本件口頭弁論終結時までの民事法定利率年五分の単利により利息額を下回ることは計算上明らかであるが、原告らの意図するところからすれば原告らは本訴において民事法定利率による主張をもしているものと解されるから、原告らの遅延損害金の請求はこれを年五分の利率による範囲内で認容するのが相当である。

六  よって、原告らの本訴各請求は、いずれも前認定の限度で理由があるから認容し、その余は失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条但書を、仮執行の宣言につき同法第一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 野澤明 裁判官 寺尾洋 裁判官小長谷馨一は転補につき署名押印できない。裁判長裁判官 野澤明)

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